むかし、六部(ろくぶ)とよばれる修行者がいて村田辺りにもよく来たんだと。六部というのは全国六十六カ所の霊場を巡り歩く修行をしている人を言うんだ。ある時、一人の六部さんが谷山あたりで体を痛めて歩くのがしんどくなってしまった。岩かげをみつけて体を休め、雨つゆをしのいでおった。そこは今の六角地蔵があるところ。そのときも地蔵さんがいっぱい建っておったが昔はそれは寂しいところだったそうな。六部さんが辺りを眺めると地蔵さんの前の水たまりに小鳥が一羽いて水遊びをしている。その鳥っこはポチャッ、ポチャッと出たり入ったり、出たり入ったり、ずーとしてる。「あの鳥っこ何してるんだべ?」と思ってそこさ行って水たまりさ手ば入れでみだっけ、それはぬるま湯だったんだと。で、その六部さん「この水さ体ば入れだら良くなるんでねぇべが」と思ってそのお湯ば体の傷だのヒザだの腰だのさ浸けてみだれば、たちまち治ったんだと。それから谷山のお湯は「お地蔵様が恵んでくれた薬湯だ」という噂が広まって近郷近在から多くの人が来るようになったんだと。